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 12月号  2025年



伊藤伊那男作品     銀漢今月の目次  銀漢の俳句    
 彗星集作品抄    彗星集選評  銀河集・作品抄  綺羅星集・作品抄
  銀河集・綺羅星今月の秀句 星雲集・作品抄  星雲集・今月の秀句    伊那男俳句  
銀漢の絵はがき 掲示板   主宰日録  今月の写真   俳人協会四賞受賞式
銀漢季語別俳句集

 

「謹告」

銀漢俳句会主宰伊藤伊那男は去る11月14日76歳にて永眠いたしました。
謹んで皆様にお知らせ申し上げます。
葬儀は個人の希望により近親者にて11月18日に滞りなく執り行われました。
生前のご厚誼に深謝し厚く御礼申し上げます。

令和7年12月
銀漢俳句会


伊藤伊那男作品


主宰の8句








     


       
             

                        

    

今月の目次








銀漢俳句会/2025/4月号
  


















   

 

銀漢の俳句 

伊藤伊那男 

◎高野山想望

 世田谷区から要介護2の認定を受けた。
 介護の実務を担当する会社の方が来て介護用品の話などを進めている。担当の方が「伊藤さん、病気が良くなったら何がしたいか、何処へ行きたいか、などを考えてみましょうか」と言う。とっさに答えたのが「高野山!」であった。もともと空海上人を信奉している。先日は〈馬追とひと日を高野泊りかな〉と詠んだ。句集『狐福』に入れた句に〈水洟を詫びつつ高野詣かな〉がある。会員のNさんが高野山の麓の銘水「月の雫」「このの三水」を送って下さり、大事に飲んでいる。湯の里という銘水の地には宿泊施設もあるという。介護会社の方の質問をきっかけに色々な想像が頭を過る。高野山の宿坊に二泊、湯の里に二泊などと思い描いて楽しんでいる。三十年ほど前から本棚にある新潮社のとんぼの本シリーズ『巡礼高野山』を何回目になるのか、朦朧とした頭で読み返した。
 一番最初に高野山を訪ねたのは二十六、七歳の頃、大晦日であった。当時年末年始は京都の妻の実家に転がり込んでいた。昼間から居座って酒を飲んでいるのも気が引けるので、早朝から京都近江奈良などを歩き廻っていた。その時は兄も来ていたので同行した。標高八百mの山上の宗教都市を初めて見て、日本にもこんな所があったのか、と驚嘆した。宿坊の一つを覗くと掃除をしていた学僧から「お泊まりになりますか」と声を掛けられた。さすがに大晦日に泊まるわけにはいかない。ただし高野山の印象は深く記憶に残った。これをきっかけに空海について勉強をした。二回目に訪ねたのは三十代の終り頃であったか、取引先の宗教に詳しいE氏とであった。高野山大学を卒業したばかりの若い僧の紹介を受け。阿字観という瞑想を体験したり、高野山大学の教授の家を訪ねたりした。また彼の手引きで素木造りの釈迦像と観音像を手に入れ、魂を入れて貰い、今も家で拝している。数珠も高野山で手に入れたものである。その後も何度か訪ねているが、直近に訪ねた「すす逃げ吟行会」の、しんしんと降り積る雪の高野山はとりわけ神秘的であった。
 では高野山に行って何をしたいのか、というと特にしたいことは無い。宿坊の高い天井と襖に仕切られた静かな部屋でくつろげれば、それだけでいい。高野山の空気から空海上人の存在が少しでも感じられたら十分である。そんな日が果して来るのかどうか、欲張り過ぎだなと思いつつ、ベッドの横の窓から空を見ながら、ささやかな夢を見ているのである。 











 





彗星集作品抄
  伊藤伊那男・選

 助つ人は隣村より村祭            山田  茜
 襖一枚生死の狭間父看取る          武田 禪次
 檸檬の皮らせんを描きグラスへと       梶山かおり
 頬杖の指に秋思の観世音           大田 勝行
 仕舞湯にかぶさつて来る虫の闇        杉阪 大和
 落し水音を重ねて千枚田           山田  茜
 地の匂ひ激しき今宵稲光           森崎 森平
 連れ人の影をたよりに秋遍路         南出 謙吾
 星合の空の瀬音か峡の宿           脇  行雲
 思ひ出の笛の音あり風の盆          上村健太郎
 戦なき空つくづくと鰯雲           中野 智子
 蚯蚓鳴く解体工事待つ団地          末永理恵子
 針山は母の手作り夜長の灯          松代 展枝
 補陀落へ空澄み渡る熊野灘          伊藤 庄平
 迎火のふはりと焔母らしき          西田 鏡子
 爽やかや仮名も漢字もくづされて       戸矢 一斗
 団栗や七十の坂ころころと          榊 せい子
 一刀のもとには斬れぬ大南瓜         坂下  昭
 溜息を吐くほど軽くなる秋思         北原美枝子









 

 







    
     

彗星集 選評 伊藤伊那男

伊藤伊那男・選

今回はお休み致します。





 







銀河集作品抄

代選

青龍の尾まで灯の入る大ねぶた     東京  飯田眞理子
青紫蘇を刻む妻より風立ちぬ      静岡  唐沢 静男
賑やかに鳴き尽くしたるつくつくし   群馬  柴山つぐ子
語部の合間遠野に蚯蚓鳴く       東京  杉阪 大和
露しとど絵島屋敷へ踏み入れば     東京  武田 花果
しまなみの大瀬戸小瀬戸青蜜柑     東京  武田 禪次
一つ灯のとろりとともる河鹿宿     埼玉  多田 美記
置き場所に困る昼間の竹婦人      東京  谷岡 健彦
夏萩やひたと閉ぢたる躙口       神奈川 谷口いづみ
南方と言ひて黙せり終戦日       長野  萩原 空木
また人を吐きぬ残暑のマンホール    東京  堀切 克洋
効き初むる日にち薬や涼新た      東京  三代川次郎


















         





綺羅星集作品抄

             代選

大声で話す一団敬老日         東京   飛鳥  蘭
新涼を手繰り寄せたる投網かな     東京   有澤 志峯
健脚を畑に褒め合ふ敬老日       神奈川  有賀  理
双鉤の線定まらぬ残暑かな       東京   飯田 子貢
抜け来たる風は古墳に女郎花      山形   生田  武
ただ一人降り立つ駅や虫時雨      東京   市川 蘆舟
秋暑し捨田に火照る忘れ鎌       埼玉   伊藤 庄平
明日知らぬ身にも四万六千日      東京   伊藤  政
大芭蕉月の光を搔き混ぜる       神奈川  伊東  岬
瀬の音も味のうちなる貴船床      東京   今井  麦
門に立つ雲水二人秋時雨        埼玉   今村 昌史
抱き起こす二百十日の竹箒       東京   上田  裕
地球儀をまはせば戦地秋暑し      東京   宇志やまと
おしまひはいつも線香花火かな     埼玉   大澤 静子
稲妻のやうな金継ぎ黒葡萄       神奈川  大田 勝行
ゆで玉子きれいに剝けて今朝の秋    東京   大沼まり子
ダム底のつむじ埃や旱空        神奈川  大野 里詩
山寺の石段に置く秋思かな       埼玉   大野田井蛙
芒活けたちまち部屋は野のかをり    東京   大溝 妙子
握力無き指もて手繰る秋簾       東京   大山かげもと
秋風や音のあらはに桑畑        東京   岡城ひとみ
赤とんぼ空一枚を水辺とす       愛知   荻野ゆ佑子
鳳仙花みんなジャージのまま帰る    宮城   小田島 渚
顔剃つて秋の祭の風に出づ       宮城   小野寺一砂
指の間をこぼるるままに紫雲英蒔く   埼玉   小野寺清人
朝顔を数ふる声も路地暮し       和歌山  笠原 祐子
雨粒に水引草の小さき揺れ       東京   梶山かおり
とうすみの影は大海にも届く      愛媛   片山 一行
地虫鳴く読み止しの本閉ぢぬまま    東京   桂  説子
潮騒の街に繰出す良夜かな       静岡   金井 硯児
稲の花咲いたとまづは姉の文      東京   我部 敬子
孑孑の羽化するときの無重力      東京   川島秋葉男
義仲寺の芭蕉葉に聴く雨の音      千葉   川島  紬
座布団のへこみを後に月の客      神奈川  河村  啓
朴の実の残りを押さへ鳥啼けり     愛知   北浦 正弘
校庭の土俵ひび割れ秋暑し       東京   北川 京子
雁渡し庇に鳩のひとならび       長野   北澤 一伯
買ひ置きの本の厚みや九月来ぬ     東京   絹田  稜  
伊那訪へば秋果に重る旅鞄       東京   柊原 洋征
受話器なき電話ボックス蚯蚓鳴く    東京   朽木  直
蜩や多摩の横山影絵めく        東京   畔柳 海村
エプロンを外し出づれば空高し     東京   小泉 良子
奔放なやうで動けぬ糸瓜かな      神奈川  こしだまほ
閉て切らぬ庭木戸ひとつ萩の宿     東京   小林 美樹
種無しを謳ふ葡萄の種嚙みぬ      千葉   小森みゆき
赤蜻蛉飛んでは元の竿の先       東京   小山 蓮子
あさがほの竿さき二輪あねいもと    宮城   齊藤 克之
秋の海ハングル文字の木つ端浮く    青森   榊 せい子
帰燕あと外輪山は藍ふかむ       長崎   坂口 晴子
連山の如く畝立て大根蒔く       長野   坂下  昭
蚯蚓鳴く観音堂の地獄絵図       群馬   佐藤 栄子
積み置ける薪の高さをとんぼかな    群馬   佐藤かずえ
捨てかねし納屋の大釜秋暑し      長野   三溝 恵子
かなかなや綾取これでおしまひに    東京   島  織布
改めて向き合ふ戦史九月かな      東京   島谷 高水
御柱空に突き立て諏訪の秋       兵庫   清水佳壽美
わが影を引きずり帰る残暑かな     東京   清水 史恵
はなびらを畳み木槿の散りにけり    東京   清水美保子
豪農の勢の跡や立佞武多        埼玉   志村  昌
星空の神話乱さず流れ星        千葉   白井 飛露
稲刈や田に虎刈のコンバイン      神奈川  白井八十八
銀河巡る鉄道予約して逝かむ      東京   白濱 武子
渋谷シニア祝六十年寡婦多し      東京   新谷 房子
豊臣の終焉の地の桐一葉        大阪   末永理恵子
盆唄へ手踊をする車椅子        岐阜   鈴木 春水
レコードの針飛ぶ音の良夜かな     東京   鈴木 淳子
遠花火ふと子育てのころ思ふ      東京   鈴木てる緒
かつて背負子に地下足袋の草刈女    群馬   鈴木踏青子
瓦礫積む町のはずれの銀河濃し     東京   角 佐穂子
初嵐扉の歪む農具小屋         東京   関根 正義
窓開けば残暑膨らみ押しよせり     千葉   園部あづき
逝く夏のレクイエムとも遠太鼓     埼玉   園部 恵夏
いつ来ても店主は無口秋暑し      神奈川  曽谷 晴子
星月夜昔は此処に丸木橋        長野   髙橋 初風
二拍手の音の乾きや秋日和       東京   高橋 透水
新涼や角の揃ひしたたみもの      東京   武井まゆみ
着慣れたるものの軽さよ新酒酌む    東京   竹内 洋平
秋暑し雨に微熱のありにけり      東京   竹花美代惠
盆景の葉の色づくも涼新た       東京   多田 悦子
秋描く筆洗の水は鈍色に        東京   田中 敬子
青葉風青一色となる信濃        東京   田中  道
寺坂に母の手を引く秋彼岸       東京   田家 正好
炎天の影に重さのあるごとし      東京   塚本 一夫
ストローを曲げて飲み干す夏の果    東京   辻  隆夫
水澄むや四方すべてを湖に       ムンバイ 辻本 芙紗
底紅のうつむく頃やいとまごひ     東京   辻本 理恵
母迎ふる苧殻きれいに燃やしけり    愛知   津田  卓
堰に嵩増す水音や稲の花        東京   坪井 研治
前に出るたびに整ふ踊の輪       埼玉   戸矢 一斗
故郷がずしりと重し墓参        千葉   長井  哲
鈍行の旅の終点秋夕焼         東京   中込 精二
ひむがしに月白といふ余白あり     大阪   中島 凌雲
竹騒ぐ音や無月の坊泊り        東京   中野 智子
ラジオ体操の胸を反らせば鰯雲     茨城   中村 湖童
去りがてに流灯ひとつ草のあひ     埼玉   中村 宗男
つぎつぎと蟻あらはれて列を継ぐ    東京   中村 藍人
風向きを肌に感じつ大根蒔く      長野   中山  中
八月の日ごとに伸ぶるものの影     千葉   中山 桐里
点描のやがて線描大文字        大阪   西田 鏡子
八月尽親の看取りに使ひきる      埼玉   萩原 陽里
日めくりの薄紙二葉原爆忌       東京   橋野 幸彦
うたた寝の合間に秋の来てゐたり    広島   長谷川明子
けふは帯すこしひくめに西鶴忌     東京   長谷川千何子
須磨寺に鳶の笛聞く秋初め       兵庫   播广 義春
赤茶けし本の匂へるちちろ虫      埼玉   半田けい子
鳴き切りし虫のむくろの軽さかな    埼玉   深津  博
辞書捲る指に張り付く残暑かな     東京   福原  紅
秋蝶に我が彷徨を見てゐたり      東京   星野 淑子
己が影壁に貼りつく広島忌       岐阜   堀江 美州
指の反り首の傾ぎも踊かな       埼玉   本庄 康代
小鳥来てわづかに揺るる小枝かな    東京   松浦 宗克
吹かれゐて秋の簾となりにけり     東京   松代 展枝
火は消えて暫しの黙や大文字      神奈川  三井 康有
永らへし日々は語らず生身魂      神奈川  宮本起代子
風渡る多摩の山辺の鰯雲        東京   村田 郁子
木の実降る土偶に蛇の縄模様      東京   村田 重子
山門にけふの格言乱れ萩        東京   森 羽久衣
まくれなゐの雨滴つぎつぎ鶏頭花    千葉   森崎 森平
時刻む八月六日の鳩時計        埼玉   森濱 直之
谷風に野良着の乾く秋日和       長野   守屋  明
せつかちな水琴窟や秋暑し       東京   矢野 安美   
母に摘む八千草こぼれやすきかな    群馬   山﨑ちづ子
誰彼も深川祭の水びたし        東京   山下 美佐
身に入むや鄙の宿りに聞く民話     東京   山田  茜
線香花火みんな優しき顔をして     東京   山元 正規
行く夏や手押しポンプの軋む音     愛媛   脇  行雲
田の上に空のほかなし稲雀       東京   渡辺 花穂















     





銀河集・綺羅星今月の秀句


伊藤伊那男・選


今回はお休み致すます。











                






 

星雲集作品抄
代選
秀逸
新涼の風を練り込み陶土搗く      栃木  たなかまさこ
暮れなづむ湖を揺らすや夜振の火    広島  小原三千代
ちらばりし言の葉探る夜長かな     東京  島谷  操
水打つて水を手向けて終戦日      埼玉  水野 加代
大方は鴉にやりて木守柿        千葉  針田 達行
澄みきつて青潔し秋の空        静岡  橋本 光子
蚯蚓鳴く湯呑みにひびの枝分かれ    東京  北原美枝子
すれ違ふ墓地の黙礼秋日傘       東京  西  照雄
山小屋の皆良き顔の良夜かな      埼玉  加藤 且之
覚えなきワイシャツ庭に台風過     東京  幕内美智子
なにもかも洗濯したき酷暑かな     東京  橋本  泰
厨音秋の気配のそこはかと       神奈川 西本  萌
曇り空泣き出しさうに秋に入る     東京  軽石  弾
湯桶にも月の姿や宿の夜        東京  田中 真美
新顔の案山子の肌は艶やかに      静岡  山室 樹一







星雲集作品抄

              代選


海底の珊瑚の骸震災忌         東京  尼崎 沙羅
卒塔婆のそつぽ向きたる墓洗ふ     東京  飯田 正人
苧殻火の風のそよぎや父母来しか    東京  井川  敏
野仏の塚のぐるりを彼岸花       長野  池内とほる
ぐんぐんと飛行機雲の秋の空      東京  一政 輪太
世阿弥忌や締めては放つ調べ糸     東京  伊藤 真紀
鹿撃ちの落とししままの空薬莢     広島  井上幸三
稜線の先に山小屋秋高し        東京  上村健太郎
ベートーヴェン偲ぶ小径のしだれ萩   埼玉  梅沢 幸子
落鮎や目から鱗の一夜干        長野  浦野 洋一
累代の墓仕舞ふ丘帰燕かな       静岡  大槻  望
芋の葉のみどりに遊ぶ露の玉      静岡  小野 無道
秋麗や呼吸整ふ濃茶点前        群馬  小野田静江
忘れ物妙に多き日秋立つ日       長野  唐沢 冬朱
終戦日正午のラジオ聞きすます     愛知  河畑 達雄
穴開けを競はせ障子洗ひけり      東京  久保園和美
少年に戻る踊り手風の盆        東京  熊木 光代
雑草の根気に負けて秋の畑       群馬  黒岩あやめ
ハンモック夢は草原かけめぐる     群馬  黒岩伊知朗
パンタロンの案山子昭和の顔を見せ   群馬  黒岩 清子
病棟にひとり黙禱終戦忌        愛知  黒岩 宏行
ひぐらしの土より生まれ土に墜つ    東京  髙坂小太郎
秋の夜パリの裏町ただ一人       神奈川 阪井 忠太
新蕎麦や旗の揺らぎに長き列      長野  桜井美津江
一村を抱き込むやうに秋の虹      東京  佐々木終吉
種採の手からこぼれて落つる種     群馬  佐藤さゆり
瓦礫の地埃まみれの鶏頭花       東京  清水 旭峰
音たてて街煙らせて喜雨来たる     千葉  清水 礼子
流れ星天に委ねる命かな        群馬  白石 欽二
幕の紋映ゆる老舗や神農祭       大阪  杉島 久江
尾根径の地蔵に語る女郎花       東京  須﨑 武雄
秋の蝶光こぼしていざなへる      東京  鈴木 野来
地蔵会の縛り地蔵の笑顔かな      愛知  住山 春人
夫に背を押され輪の中ねぶたの夜    東京  田岡美也子
傷つきし羽はばたかせ秋の蝶      東京  髙城 愉楽
秋高し百万遍の古書祭         東京  寳田 俳爺
トンネルを抜けしダム湖や秋の虹    埼玉  武井 康弘
凹みたる轍の跡の草の花        埼玉  内藤  明
夕立や湯畑急ぐ下駄の音        群馬  中島みつる
灯消し銀河を仰ぐ山の夜半       神奈川 長濱 泰子
四拍手の出雲の社空高し        京都  仁井田麻利子
校庭に体育の声九月かな        東京  西田有希子
窓の木々揺れひとつなき熱帯夜     神奈川 花上 佐都
変遷の昭和百年敬老日         長野  馬場みち子
夏果てのめくり忘れしカレンダー    神奈川 日山 典子
蓮の葉や添水のごとく水こぼす     千葉  平野 梗華
麓まで雲垂れてをり蕎麦の花      千葉  平山 凛語
足場組む金属音や処暑の雨       長野  藤井 法子
富士薊噴火の噂あるやなし       栃木  星乃  呟
虫しぐれ空き家の庭に響きけり     東京  松井はつ子
ほそき葉にほそき足添へ赤とんぼ    東京  南出 謙吾
馬糧にもなるらし木槿道の辺に     愛知  箕浦甫佐子
きしきしと哭くや形見の秋扇      東京  宮下 研児
久久の秋刀魚の匂こんがりと      宮城  村上セイ子
望の月眠らぬ街を渡りけり       東京  家治 祥夫
灯籠に電源繋ぎ盆用意         神奈川 山田 丹晴
稲つるび立木を裂きし闇夜かな     群馬  横沢 宇内
百年に一度が常となる厄日       神奈川 横地 三旦
こぼれ萩くぐれば我も役者めく     神奈川 横山 渓泉
地獄絵図拝し山門鳥兜         千葉  吉田 正克
囮鮎役目終へしか放たれり       東京  若林 若干
涼新た快速列車小樽行         東京  渡辺 広佐
















星雲集 今月の秀句

伊藤伊那男

今回はお休み致します。


















伊那男俳句


伊那男俳句 自句自解(107)
          
  
師を送る中野坂上雁の頃


 盤水先生が亡くなられたのは平成二十二年八月二十九日。享年九十一歳であった。先生はその前から体調を崩されてお会いできずにいたが、その年の五月であったか、結社誌を創刊する意思を固めて、中野坂上のご自宅をお尋ねした。その時はお元気そうで笑顔で迎えて下さった。そして、「おやりなさい。応援しますよ」と優しく仰ってくださった。「結社名が決まったら題簽も書きますよ」とも。結局お願いしないまま亡くなられたが……。葬儀はご自宅近くの宝仙寺で執り行われた。私が俳句を始めた三十三歳の時、先生は六十四歳。私の父と同年代であった。私が結社の中でもとりわけ若かったこともあってか随分気に懸けて下さった。しばしば新宿西口の酒亭「ぼるが」に落ち合い、俳壇の四方山話をお聞きしたものだ。まだ無名の私を超結社句会「塔の会」に無理矢理押し込んで下さったが、この句会で揉まれなければ私の今日は無かったのではないかと思っている。今年は十五回忌であった。

よしと言ひあしと言ひ皆末枯るる

近江の安土城に登ると、眼下に葦原が一望できる。近江簾の産地である。私の故郷の信州伊那谷に寒天製造の小笠原商店があり、以前見学に行き、天日干にする簾について聞くと、近江簾を使うという。最も優れているという。京都の町屋の夏の窓を守る簾ももちろん近江簾である。さてその材料である「あし」と「よし」(葦・蘆・葭)にはどういう違いがあるのだろうか。これは実に単純明快で「あし」の音が「悪(あ)し」に通じることを忌んで、万葉集の時代から「善(よ)し」に読み替えたのだという。つまり今はどちらに読んでも正しいのである。なお近江では荻のことを「あし」と呼ぶという。句はこの読み替えを通して、良い物も悪い物も結局は等しく枯れ果てていく、という自然界、もっといえば人間界の暗喩を絡ませてみたもので、一応成功したようだ。だが決して言葉遊びだけで終わらせるつもりは無く、琵琶湖に続くあの葦原の美しさを心に止めて置きたかったのである。
















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俳人協会四賞・受賞式





更新で5秒後、再度スライドします。全14枚。







リンクします。

aishi etc

        
















銀漢の絵はがき


挿絵が絵葉書になりました。
Aシリーズ 8枚組・Bシリーズ8枚組
8枚一組 1,000円

ごあいさつにご利用下さい。

















掲示板

















               
 
     

「銀漢」季語別俳句集




拡大します。
銀漢季語別俳句集
待望の『季語別俳句集』が3月に刊行されました。










主宰日録  

  

9月

9月3日(水)
早朝散歩。昨日処方して貰った食欲の出る薬を飲んでみる。朝昼兼食の五穀米、蜆汁、生湯葉、酸茎漬、葡萄、桃、梨などの小皿料理佳し。奈良の畑中さん、郷里の従兄から気遣いの電話。副作用はさほどではないが、気怠い。夜、佐賀嬉野の湯豆腐、新潟の油揚焼、お稲荷さん一つ。だだ茶豆。

9月4日(木)
早朝散歩。今日は四周でヘトヘト。梅干おにぎり、嬉野豆腐、蜆汁など。13時、整体のひとみさん来宅。

9月5日(金)
台風接近で雨。朝マフィン(バター、苺ジャム)玉葱スープ、牛乳、紅茶、少しずつ出してくれると食べられる。有難し。最後にコーヒー。昼『狐福』届く。実にいい仕上り。武田さん、北澤一伯君、編集部の方々に感謝。4月初めに纏め始めもう出版できたのは異例の早さ。今あの集中力はとても持てない。大袈裟かもしれないが、生きている内に手にすることができて嬉しい。昼、鮪の刺身と御飯、蜆汁。「銀漢」9月号の校正は自分で書いたものだけにさせて貰う。夜、嬉野の湯豆腐、おじや、アイス最中半分。

9月6日(土)
早朝散歩。雨の後にて秋冷の趣き。バナナ1本、パン少々、アイスコーヒー。昼、風月堂の赤飯、豆大福、餡この団子。割と元気。夜、長芋、モロヘイヤ、納豆のせうどん。

9月7日(日)
昨夜は20時位からこんこんと眠る。こんなに熟睡したのは何ヶ月ぶりではないか。早朝散歩。虫の集く声が。朝食は赤飯、秋刀魚半身、ジャガイモのカレースープ。らっきょ(うまい!)、牛乳。昼、とろろ蕎麦。夜、トンカツ一切、焼そば、巾着茄子塩揉、小鮎山椒煮、らっきょ、トマトジュース(レモン垂らして)。

9月8日(月)
散歩休む。嬉野の湯豆腐。鮭の粕漬、ごはん少々、だだ茶豆と牛乳のスープ、葡萄。17時、加々美さんの整体。小田急OXで林檎、キウイフルーツ、パイナップルを買う。

9月9日(火)
早朝散歩。食事は前例のごとく。細々ながら何とか食す。昨日は眠り浅く、その分昼寝。17時、整体のひとみさん来宅。夜、鰹の叩きと玉葱佳(といっても二切れ)。

9月10日(水)
早朝散歩。伊那行きの準備をのろのろと始める。一つの事をするのに今迄の10倍位かかる。夜、盛岡冷麵(1袋の3分の1位)。

9月11日(木)
夜中に起きて伊那の「井月さんまつり」の実行委員長の挨拶と井月のことを少し、まとめる。久々原稿を書く。2時間ほど集中。いささか疲労。今日は早朝散歩とりやめ。朝、納豆卵かけごはん。午前中、区から派遣の指圧の壺井さん来宅。あと昼寝。豪雨。

9月12日(金)
10時半、大野田さんの迎えを受けて伊那へ向う。談合坂で清人車と合流。14時過、「伊那パークホテル」に入る。16時から整体70分受ける。北澤一伯さん来てくれる。

9月13日(土)
午前中、「伊那中央病院」の中山中先生が訪ねてきて下さる。先生の車で「井月さんまつり」の会場「いなっせ」に入る。東京からのバスは渋滞に巻き込まれており、30分ほど遅らせて13時半から大会スタート。実行委員長の私が歓迎の挨拶と井上井月が何故伊那谷に来たのか、京都の北野五律との関係について私見を披露。あと木暮陶句郎、井上弘美特別選者の講話。表彰式など。駒ヶ根の従兄、父の実家を守る従弟の純一君が来てくれたことが嬉しい。親睦会も大いに盛り上がる。盛大で楽しい会となった。ホテルへ戻るが、気の高ぶりが納まらず寝付けない。

9月14日(日)
7時半、桃子が迎えに来る。東京を4時半に出たという。8時、伊那谷バスツアーを見送る。「グリーンファーム」で買物。山ほど買う。駒ヶ根に行き、私の生家跡を桃子に見せ、従兄の家へ挨拶。町は丁度、「大御食神社」の秋祭。また来週の「五十鈴神社」の秋祭の予行演習の最中。声が掛かり振り向くと何と元市長の杉本君!6月に来たときは安楽寺の境内でばったり会っており、不思議な縁。蕎麦屋の「喜のや」に寄る。14時頃、帰宅。マッサージ機30分。夜、里芋煮、無花果、柿の葉ずしなど。伊那で買った里芋、ことの外大きい!

9月15日(月)
納豆卵かけ御飯。夕顔の味噌汁。里芋煮。高遠饅頭、木曽の蕎麦饅頭、青梨など。食欲あり。といってもごく少量づつだが。昼、整体のひとみさん来宅。旅の疲れか寝て過す。

9月16日(火)
13時半から「東京目白クリニック」。点滴治療二種。帰宅して眠る。

9月17日(水)
発熱もあり、終日こんこんと眠る。頭は朦朧としている。

9月18日(木)
朝方、ようやく起き上がる。豆乳。午前中整体の壺井さん。アイスクリーム。また眠る。夜、お粥少々、里芋煮。数句会の選。夜、雨。クーラーを切る。

9月19日(金)
体調やや回復。伊那吟行の清記、楽しく選句する。ただし終日ベッドの中。

9月20日(土)
車無く、自力で「順天堂医院」へ行くこととする。自宅から駅、新御茶ノ水駅から病院は無限の長さに思われる。3.400歩。やっと辿り着き、血液検査、採尿。0時40分、予約診(特別料金が掛かるが待たされない)の待合室で杏子と合流。齋浦先生「肝臓、腎臓の数値はいい、10月にCT検査をしよう」と。今回は血液検査だけだったので、まだ見捨てられていなかった……と思う。朝、風呂に入ったのも一大仕事にて疲労困憊。帰宅してひたすら眠る。あともぐずぐず。

9月21日(日)
今日も絶不調。ベッドで悶々と過す。昼、整体のひとみさん来宅。食欲なし。同人の荻野ゆ佑子さんより改めて句集出版についての相談あり、集中力なく、メールのやりとりも途切れ途切れに半日懸り。また眠る。

9月22日(月)
午前中「関東中央病院」、外川先生に近況報告。戻ってまたひたすら眠る。癌が進んでいる為か、薬が戦っていてくれるためか?眠い。

9月23日(火)
夜中3時起、白井飛露句集の跋文について考えては眠り考えては眠る。これはいい句集になる!数句会の選句。朝、赤飯と白菜煮。あと食欲なし。夜、白菜煮、赤飯、伊那で買った馬刺2切れ、さざえ。火事場の馬鹿力を出して跋文を荒書きする。ヘトヘト。

9月24日(水)
飛露句集の跋文を整える。主宰8句送る。

 9月25日(木)
群馬から到来の糀入り浅漬旨い。日の出位置が窓辺に戻ってくる。朝焼けが荘厳。岐阜の「栴檀」主宰辻恵美子さんより『狐福』30冊の注文あり。嬉しいこと!午前中、整体の壺井さん。「銀漢句会」に出句忘れたことに気付く。数句会の選句。

9月26日(金)
桃子付添いで調布の俳句講話。外で行う仕事の最後。伊那男俳句の背景。4句集の特徴などについて。自分の事はあまり語らずにいたが、意外にも好評であった。あと1階の喫茶店で茶話会。皆さんから励ましの言葉を戴く。「銀漢句会」選句とコメント。

9月27日(土)
やはり昨日頑張った疲れが残ったか、午前中、2度寝、3度寝。午後、ひとみさんの整体。世田谷区から要介護二の認定の知らせ。






 

     
 






















         
    






今月の季節の写真/花の歳時記




2025/12/10 撮影   シクラメン   . HACHIOJI










花言葉   「遠慮」「気後れ」「内気」「はにかみ」


シクラメン
「シクラメン」は、サクラソウ科シクラメン属の多年草で原産国は西南アジアで、英名は「Cyclamen」です。
語源はギリシア語で円(Circle)を意味する”kuklos”に基づき、球根の形が丸いことにちなむそうです。
和名は、花茎の先に反り返って咲く花の様子から「篝火花(かがりびばな)」といいます。
また、豚が根茎を食べることから、英語でsowbread(豚のパン)ともいい、その訳語で「豚の饅頭」とも呼ばれます。



皇帝ダリア 冬薔薇 ポンセチア シクラメン










写真は4~5日間隔で掲載しています。 


2025/12/3















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